がんとともに

30歳で胃がんになった消化器内科医が胃腸クリニックを開業してからの想い

訪問診療1例目

こんにちは。

 

本日午後は休診ですが、クリニックの清掃・ワックスがけのため残って仕事をしています。

 

まだ開業して9ヶ月ですが、人の出入りするところやずっと物品を置いているところは、いつの間にか汚れがたまっています。

 

キレイにピカピカにして、明日からまた診療に臨みたいと思います。

 

訪問診療始めました

 

開業当初は在宅医療・訪問診療を行いますと掲げてはいませんでしたが、外来に通院していた患者さんの具合が悪くなり、開業3ヶ月目に訪問診療の1例目を開始しました。

 

開業前に勤務していた施設で訪問診療や在宅看取りをしていた経験もあり、いずれは開始するだろうと思っていましたが、予想より早く始めることとなりました。

 

元々週1回は外来通院しており、ある程度状態を把握していましたが、患者さんの状態が悪化したと携帯電話に連絡があった時には、ドキッとしました。

 

家族とともに外出している時だったので、妻に「どうしたの?」と聞かれました。

 

幸い電話の時点では緊急性はなく、訪問看護師から報告を聞き指示を出しましたが、ちょうど連休中であり、翌日朝1番に患者宅に伺うこととしました。

 

進行癌で治療していましたが、お腹の水が貯まって痛みもありきつくなったようです。

 

 

外来通院していた時から何回も本人の希望を聞くことがあり、「先生に任せている」「自宅で療養したい」「入院はしたくない」と意向がハッキリしていました。

 

幸い家族も本人の意向に賛同して協力が得られましたので、医療・看護のサポート体制を築くことが出来て、訪問診療を開始することになりました。

 

 

鎮痛薬や利尿薬やステロイドを投与しながら、症状を緩和できるように努めましたが、どうしてもお腹の膨満感が強く、その後お腹に針を刺して水を抜く治療も行いました。

 

訪問診療では患者さんの自宅で、鎮痛薬として麻薬の投与はもちろん、注射や穿刺することも可能です。

 

緩和ケアと呼ばれる、「病気に伴う心と体の痛みを和らげること」を目標に治療を継続し、最終的には自宅で看取ることとなりました。

 

亡くなる前日も自宅で診察し会話をして帰りましたが、翌日朝家族が起きた時には呼びかけに反応がなく、朝の外来開始前に死亡確認となりました。

 

 

 後日、家族や訪問看護師から在宅での治療が出来て、看取ることが出来たことに対して感謝の意を伝えられました。

 

自分が出来ることを行い、感謝されると嬉しいものです。

 

患者が亡くなって嬉しいとは不謹慎な言葉かもしれませんが、医者冥利に尽きるということです。

 

 

 

こうして少しずつ在宅医療・訪問診療に対して、前向きに関わり始めることとしました。