がんとともに

30歳で胃がんになった消化器内科医が胃腸クリニックを開業してからの想い

がん10年生存率

こんにちは。

 

今日のニュースで、がん10年生存率のデータが更新された、とありました。

www.zengankyo.ncc.go.jp

 

振り返ってデータを見て思うことはいろいろあり、データはあくまでただの数字ですが、告知されてから手術前の時期は自分にどうあてはまるのかと考えていました。

 

たとえば「胃がん」の全症例の10年生存率は、67.3%とあります。

ただし当然進行度、ステージにより異なります。

 

ステージⅠ 93.9%

ステージⅡ 55.8%

ステージⅢ 38.1%

ステージⅣ 7.0%

 

ステージⅠの早期癌であれば9割以上の方が生存していますが、ステージⅣの進行癌であれば9割以上の方は亡くなっています。

しかしどちらも100%ではなく、0%でもありません。

ステージⅠでも亡くなっている方はいるし、ステージⅣでも生存している方はいます。

 

上記のHPにも書いてあるように、がんは不治の病から、つきあう病へ、治る病へ変化しています。

あくまで今まで治療された人のデータであり、自分のこれからの未来の数字ではなく、もちろん余命でもありません。

現在10年生存率が出ている人が10年前に受けた治療と、今まさにこれから受けようとしている治療は完全に同じかどうかは分かりません。

 

医師としては、癌になったひとが自分はどうなるのかと気にして見るデータではなく、癌になっていない人がどういう癌はタチが悪いのか、治りにくいのか、治療後も長年再発の危険性があるのか、といったことを知るためのツールにすぎない、と思います。

 

自分自身も、いろいろなことを考えながら、数字を気にすることなく、治療に臨み、術後を過ごしてきました。

もうすぐ今年の9月には、自分も術後10年を迎えます。

 

いつもと変わらず、家族とともに、仕事をしながら、その日が来ることを楽しみにしています。

そして次の10年に向けて、日々楽しんで頑張りたいです。

胃がん告知の翌日

こんにちは。

 

 昨日に引き続き、手術当時のことを振り返ります。

 

自分の病気

30歳の誕生日に胃カメラをして、その翌日に「胃がん」と告知されました。

 

告知されてからやるべきこととしては、自分の病気のことと仕事のことがありました。

まずは現在の自分の状態を調べて、治療方針を決めないといけません。

同時に勤務している診療所は医師一人のみの離島の診療所であり、自分がいなくなることは島に医師が誰もいなくなることとなります。当時は人口800人程度いたため、無医村にするわけにもいきません。

入院・手術を前提として、今後の予定を早急に決める必要がありました。

 

告知翌日の診療は午前中のみにして、昼のフェリーに乗って、急遽検査をした病院に行き、研修先の上司と外科医と話をすることとしました。

 

 再度内視鏡の写真を見て、病理検査室で顕微鏡を実際にのぞいて、「がん」であることを確認しました。

この時点で少し冷静になりながら、外科医と今後の検査予定および手術日程の相談をして、同時に最大何日間入院が可能か=離島を留守に出来るか、確認されました。

通常胃がんの手術であれば、2週間程度で退院可能ですが、即仕事復帰できるかどうかは分かりません。3週間程度休めれば助かるなぁと思っていました。

これからの検査日と手術日が決まり、あとは周りの環境調整をすることになります。

 

 この日は実家が近いこともあり、実家で夕食を食べることにしました。

とくに事前に知らせずに、「夕食を食べに行くね」とだけ電話して行きました。

両親と祖母と自分の妻と5人で食事して、食後に「実は胃カメラ検査をしたんよね」と話し出しました。

TVもついたまま、自然の会話の中で話をして、サラリと受け流してくれたら自分自身も助かるなぁと思っていました。

「どうだった?」

胃がんになってて、手術することになった」

「え・・・」

 

と一瞬会話が止まり、母は急に吐き気を催して台所で空嘔吐してしまいました。

 

自分が「胃がん」と告知されたこと、妻に説明することも大変でしたが、自分の親に向かって自分ががんになっていると説明することは、一番きつかったです。

 

親がショックを受けているということに、自分もショックを受けてしまうけど、医師である自分が一番病気の状態を理解しているので、冷静に説明しないといけないのです。

でもそうして説明することで、自分を保ちながら冷静になれた部分もありました。

 

 

あとは仕事の調整が必要でした。

また続きます。

 

告知

こんにちは。

 

ときどき医療講演会を頼まれることがあり、自分の病気について話をすることがあります。

簡単に「胃がんで手術しました」と話をしていますが、やはりその過程ではいろいろ考えることがあり、みなさんと共有できればと思います。

 

自分の病気

第1回目の話の続きです。

http://blog.hatena.ne.jp/higuchiclinic/higuchiclinic.hatenablog.com/edit?entry=10328749687209277108

 

胃カメラ検査の翌日は、島で普段通り診療を行い、外来に来る患者さんと話をしながら検査のことを一時的に忘れていました。

仕事も一段落した夕方5時前に、検査した病院から電話が入りました。

先輩女医からの電話でしたが、いつもは明るい声で挨拶してくれるのに、沈んだ声だった時点でいやな予感がして、「やっぱり悪性だった。がんだった。」と告げられました。

signet-ring cellが出ている」と言われたところで、涙が出てきました。

ちょうど中学・高校の同級生医師も電話先にいたので代わりましたが、正直何を話しても現実感がありませんでした。

 

診療所のスタッフに「昨日の検査の結果、がんでした」とだけ話して、早々に診療所2階の自宅に上がりました。

自分が医師として、また患者として、妻にどのように話そうかと考え、歩いて海岸まで行き、ベンチに座って話しました。

 

電話で言われたときよりも、少しは落ち着いて話をしたと思います。

しかし妻としては、「本当に全部話をしてくれているのか」「心配かけないように隠していることがあるのではないか」と思っていたと、後から教えてくれました。

ただ当時の時点では、「胃がんであること」が判明しただけだったので、正直自分でも分からないことは多く、現在どのような状態か、今後どうなるのか、どうしたら良いか、を調べて決める必要がありました。

話をしてからも、波の音を聞きながら、長く長くベンチに座っていました。

 

翌日も平日でしたが、診療所スタッフと相談して午後休みを頂いて、検査をした病院に行き、みんなと相談することにしました。

 

これから手術までの間は、体はどうもありませんが、気持ちとしてはかなりきつかった時期でした。

 

まだまだ続きます。

大腸がん

こんにちは。

 

今日はビックリするニュースが流れていました。

プロ野球解説者の大島康徳さんが大腸がんステージ4で治療中と公表されました。

今まで通り、普段通り|大島康徳オフィシャルブログ「ズバリ!大島くん」Powered by Ameba

 

現在治療中で元気とのことですが、やはり進行した状態で見つかることは正直残念な気持ちが入り交じります。

詳細は分かりませんが、もう少し早い時期に発見できていれば、今後の見通しも変わっていると思われます。

 

がんの予防、早期発見・早期治療に向けて、まだまだ認知されていないことがあるのだと再認識しました。

医師の一人として反省するとともに、自分のクリニック・HP・facebook・ブログで少しでも世間に知識が広がり、健康を保つ一助になれればと思います。

 

 がんとともに

 

本人は、ブログのタイトル通りに「今まで通り、普段通り」前向きに自然体で生きるとしています。

 

「がん」になっても、「がん」とともに、その人らしく生きていくこと。

 

言葉で言うことは簡単ですが、実際にはなかなか難しいことと思います。

でも、「がん」と診断された瞬間に死ぬわけではありません。

また人間として、いつか死ぬときは全員訪れます。

どのように死ぬかは、どのように生きるのか、と表裏一体です。

「今まで通り、普段通り」生きていくことを応援したいと思います。

 

日本ホスピス・在宅ケア研究会

こんにちは。

週末は久留米市で開催された日本ホスピス・在宅ケア研究会

http://www.nksnet.co.jp/jshh24_kurume/

に参加してきました。

 

今回初めて参加しましたが、大変面白かったです。

医師や看護師だけではなく、他職種の方が参加しており、また宗教家や患者家族といった医療関係者ではない人も参加して、発表や質疑をしていました。

今まで経験したことのないスタイルで、カルチャーショックを受けながらも、「面白い」と感じました。

 

一番楽しみにしていたのが、2日目午後のマギーズ東京

http://maggiestokyo.org/

センター長 秋山正子さんの講演でした。

 

自分が「がん」患者として、また「医師」として、何が出来るかを考えさせられました。

自分自身が「がん」と告知されて、入院して、手術して、検査をたくさん受けてきました。

そのたびに心は揺れ動いてきましたが、冷静に冷静に「医師」の心で受け止めるようにしてきました。

しかし、一般には「がん」患者とその家族のこころは、揺れ動いて落ち着くことがなかなかありません。

その助けに少しでもなれればと、思います。

 

 

ひとりひとりに寄り添う

友達のように対等な立場で

自分らしさを取り戻す

 

 

Daring

Sharing

Caring

 

 

いくつかのキーワードとともに、これからやるべきことを考えています。

これからの大事な一歩を踏み出していこうと思います。

がんとともに

こんにちは。

昨日は節分でした。

豆まきの鬼のため、自宅で豆を投げられ、仮面ライダーにハマっている息子と戦い「鬼はそと」されてきました。

 

さて、引き続き自分の病気について書こうかと思いましたが、まずは自分の想いも書いておこうと思います。

 

私が30歳で胃がんと判明し、手術してもう9年が経過しています。

その間、癌の治療経過としては問題ありませんが、日常生活では困ることも多々ありました。

 

今振り返ると最初の5年間は、やはり再発の心配が一番大きかったです。

同時に食事摂取に制限あり、体重が15kg以上減少して、体力的にもきつかったです。

食べたい気持ちはありますが、一気に食べるとダンピング症候群に・・・。

 

ダンピング症候群になると、低血糖症状として、からだが無性にダルくなり、冷や汗が出て、全身の力が抜けてきます。

自宅や職場には常に糖分の多いチョコやウィダーインゼリーが常備してあり、糖分補給して1時間程度休んでいると、ようやく回復する状態でした。

仕事柄、当直したり患者の状態が悪く帰りが遅くなることが続くと、なりやすい傾向もありました。

年々、ならないように食事に気をつけて食べることが出来るようになりましたが、最近も油断すると1-2ヶ月に1回なってしまいます。

 

また病気が落ち着いて、子どもも生まれて、人生設計を考え直していると、保険の問題も出てきました。

実際、自宅の建築時や今回のクリニック開業にあたり、銀行から融資を受ける際に胃がんの病歴があることがネックになり、時期尚早で延期となったこともありました。

 

がん治療後には、病気自体に限らず、このような食事・生活面でも様々な影響が出てきます。

今まで内科医・消化器内科医として、多くのがん患者さんとその家族と接する機会がありましたが、より多くの情報を伝えていければと思っています。

 

がんの予防はもちろん、早期発見・早期治療が出来れば幸いです。

しかし現実的にはそのようにうまくいくとは限りません。

それでも、がんになっても、がんとともに、うまく付き合っていくことが重要ではないか、と考えるようになりました。

「がんとともに」言うことは簡単ですが、気持ちは複雑です。

少しでもその支えになれればと思っています。

インフルエンザ

こんにちは。

昨日の続きで自分の病気のことについて話をしようと思っていました。

 

しかし昨日・今日とクリニックにはインフルエンザの患者さんが増えてきましたので、まずは病気についてもお知らせしたいと思います。

 

厚生労働省HP

インフルエンザ(総合ページ) |厚生労働省

に詳しいので、ぜひ参考にして頂きたいです。

その中から、いくつか重要な点を抜粋してご案内します。

 

普通のかぜとは違う?

 普通のかぜと比べると、38℃以上の高熱となり頭痛や関節痛や筋肉痛を伴い、全身倦怠感などの「きつさ」・「だるさ」が強く出てきます。あわせて、鼻水・のどの痛み・咳・痰も出てきます。

 ただし、今シーズンのインフルエンザを診療して思うことは、通常のインフルエンザよりは高熱にならない人がいること、高熱が出てもすぐ翌日には解熱する人がいること、「きつさ」「だるさ」の全身症状が少ない人がいることを感じています。

 そのため、普通のかぜかな?と思っていると、周囲に感染を拡大させる結果になっている場合がありますので注意が必要です。

 

いつ病院に行く?

 インフルエンザの検査が病院・診療所では出来ることから、熱が出るとすぐに夜中でも行かないといけないと思い込んでいる人もいるようです。

 実際には迅速検査キットの種類によりますが、感染して熱が出てから6~12時間後が良いようです。あまり早すぎると、検査をしても感染の確認が出来ません。その場合には「本当にインフルエンザではないのか」、「本当はインフルエンザだけど早すぎて判断できないのか」のいずれか分かりません。

 学校や会社の都合もありますが、熱が出ていればインフルエンザでなくとも感染する病気の可能性はありますので、まずは休んでから、適切なタイミングで受診すると良いでしょう。

 

タミフルは大丈夫?

 数年前に抗インフルエンザ薬のタミフル内服後に異常行動(急に走り出す・歩き回る)をおこして転落死した事例がありました。とくに10代に多く見られたため、その使用を控えるように指示がありました。

 その後の調査では、タミフル内服に関係なく、他の抗インフルエンザ薬(リレンザラピアクタ・イナビル・シンメトレル)内服後も、同様の事例が発生しています。また薬自体を何も内服していなくても、インフルエンザにかかっているだけで異常行動を起こしている事例もあります。

 以上から、タミフルだけが悪いのではなく、インフルエンザ感染による影響が大きいと考えられています。少なくとも発症から2日間は患者が一人にならないように配慮をすることが重要です。

 

いつまで外出できない?

 インフルエンザは解熱してもまだ感染力があります。学校保健安全法では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日を経過するまで(幼児では3日)」出席停止の期間と定められています。基本的にはそれに準じて、患者さんに説明することが多いですが、大前提としてマスク・咳エチケットをお願いしています。

 

簡単にお話しましたが、まずはインフルエンザにかからないことが大事です。

きちんと栄養をとり、しっかり休養もとり、うがい・手洗い・マスク・咳エチケットで予防することが大事です。

 

万一感染したら、安静・水分補給を心がけて、感染を拡大しないように休むことが一番です。

 

高校受験・大学受験のシーズンとなり、受験生やその家族も心配でしょうが、頑張ってこの時期を乗り切りましょう!!