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がんとともに

30歳で胃がんになった消化器内科医が胃腸クリニックを開業してからの想い

ピロリ菌を除菌したら

こんにちは。

 

GWが終わり、日差しが暑くなってきました。

 

クリニックは暦通りの休みを頂きましたが、休日も在宅で療養している方の家に訪問していました。

 

通院外来だけではなく、自宅でも、最期まで、向き合っていきたいと思っています。

 

ピロリ菌除菌後

 

前回までピロリ菌の除菌治療について説明してきました。

 

今回は除菌治療後に気をつけることをまとめました。

 

多くの方は、ピロリ菌を除菌すると「治った!」と思いますし、「これで大丈夫!安心!」という気持ちになると思います。

 

実は半分正しいですが、半分は間違っています。

 

胃潰瘍や十二指腸潰瘍になる可能性は非常に低くなりますし、安心と思います。

 

しかし胃がんの危険性はゼロにはなっていません!!

 

除菌治療をした年齢や胃炎の程度により、治療後の危険性が変わってくるからです。

 

小さい頃に感染したピロリ菌は、年々萎縮性胃炎が進行して、細胞レベルでは様々な変異を起こしていることがあります。

 

胃カメラで確認しても認識できない病変が、数年後に周囲の粘膜がキレイになることで明瞭になってくることや、徐々に増大して認識できるようになることがあります。

 

ピロリ菌に感染していた多くの方は胃がんになる母地があるのです。

 

除菌することで、それ以上進行することはありませんが、それまでの胃炎の母地がありますので、胃がんになる危険性はゼロにはなりません。

 

除菌治療後も、必ず1年に1回の胃カメラ検査をして、胃がんの早期発見を目指していくことをお勧めしています。

 

 

 

実際に、自分の父もピロリ菌除菌後に胃がんが見つかりました。

 

幸い早期でしたので、内視鏡治療ESDで治癒することが出来ました。

 

 

 

またピロリ菌を除菌すると胃酸の分泌が復活するために、たまに逆流性食道炎を引き起こすか違います。

 

胸焼けや酸っぱいものが上がってくるといった症状がある際には、胃酸を抑える薬の内服が有効です。

 

 

 

胃がんの発生や死亡は年々減少していますが、まだまだ実数としては他のがんに比べると多い状況です。

 

少しでも早くピロリ菌の除菌治療をすることで、胃がんになる人がゼロに近づくことを夢見ています。

 

 

次回からは、訪問診療についてお話しします。

ピロリ菌の治療

こんにちは。

 

熊本地震から1年が経ちました。

 

1年前の4月14日、内科学会総会で発表するため飛行機で東京に向かっている最中に、前震といわれる地震が発生しました。

 

羽田空港に到着するとTVが臨時ニュースになっていて、慌てて自宅に連絡して家族の無事を確認しました。

 

熊本・大分をはじめ九州のために、自分に出来ることを考えた時でもありました。

 

 

ピロリ菌の除菌治療

 

前回までに続いて、いよいよピロリ菌の除菌治療について解説します。

 

検査でピロリ菌がいることが分かると、除菌治療をお勧めしています。

 

ただし保険適応となる病気が決まっていて、元々は胃潰瘍や十二指腸潰瘍の人が対象でしたが、徐々に胃MALTリンパ腫や特発性血小板減少性紫斑病の人や早期胃がんに対する内視鏡治療後の人にも拡大し、現在はピロリ菌に感染した胃炎の人も適応となっています。

 

また胃がんが出来ないないかどうか確認する意味も含めて、治療前に胃カメラ検査を行うことが必要となります。

 

治療の方法としては、抗生物質を2種類と胃酸を押さえる薬1種類の計3種類の薬を朝晩2回、1週間内服します。

 

治療自体は1週間のみで終了となります。

 

抗生物質に対して耐性を持ったピロリ菌がいるため、100%の成功率とはなりませんが、ほぼ90%以上の確率で成功します。

 

ただし100%ではないために、必ず除菌できたかどうか、確認する必要があります。

 

感染診断したときと同じような検査ですが、除菌治療してから最低4週間、出来れば8週間は間を空けて検査をします。

 

もし失敗していれば、抗生物質の種類を変更して2回目の治療を行い、95%近くは2回目までで除菌治療が成功します。

 

万が一失敗した人は、保険治療ではなく自費診療となりますが、3回目の治療まで検討することとなります。

 

 

治療に際して気をつけること

 

抗生物質を内服するため、薬剤にアレルギーがある人は要注意です。

 

また1週間の薬を途中で中断すると成功率がかなり低くなってしまいますので、忘れずにきちんと内服することが重要です。

 

よく聞かれることでもありますが、飲酒は2回目の治療の際は影響が出るため、控えましょう。

 

他にも副作用として、アレルギー反応(発疹・かゆみ)、軟便・下痢、味覚異常、肝機能障害が報告されています。

 

実際今までアレルギーはなかったけど、内服中や内服後に発疹が出現したり、下痢になった人は経験があります。

 

いずれも軽症で速やかに回復しましたが、やはり薬を内服するということで、危険性もあることは理解しておく必要があります。

 

胃潰瘍や十二指腸潰瘍はもちろん、胃がんの再発予防にも十分役立つピロリ菌の除菌治療ですので、感染している人はぜひ治療をしましょう。

 

次回は除菌治療後に気をつけることです。

開業して半年

こんにちは。

 

かなり久しぶりの投稿となります。

 

3月はほぼ1ヶ月ブログの更新がなく過ぎてしまいました。

 

いろいろな事情があったのですが、これからはきちんと定期的に更新していきたいと思います。

 

 

開業後半年

 

昨年10月6日に新規開業して、半年が経過しました。

 

自分の今までの経験を活かして、地域の方々の健康に貢献出来るように、自分なりに頑張ってきました。

 

おかげさまで受診してくれる患者さんも増えて、かかりつけ医としていろんなことを相談してくれる人がいたり、病気の進行に伴い自宅で最期を迎える人のサポートをしたりしました。

 

その中には、血液検査や胃カメラや腹部エコーや大腸カメラで、残念ながら「がん」が見つかった方もいます。

 

早期発見で治療が出来る場合もあれば、手術や積極的な治療に至らず緩和ケアを中心に見守ることもあります。

 

いずれにしても、「がん」を抱えながら現実の日々を生きていくことになります。

 

 

肉体的に、からだがきつい、痛い、食欲がないといった症状が出ることがあります。

 

精神的に、なかなか受け入れられない、気持ちが落ち込む、先のことを考えられないといった問題があります。

 

同時に家族も非常に思い悩むことがあります。

 

治療をしても、治療をしなくても、「がん」があるという思いは消えません。

 

 

そのような思いに対して、寄り添いながら共感しながら「がんとともに」過ごしていけるようにお手伝いが出来ればと思っています。

 

 

まだまだ半年しか経過していませんが、濃密な経験をした半年だったと感じています。

 

これからも頑張りますので、よろしくお願いします。

ピロリ菌に感染してから

こんにちは。

 

前回に引き続き、ピロリ菌と病気の関係についてです。

 

感染するとどうなる?

小児期に感染すると、1年以内に、ほぼ100%慢性胃炎の状態となります。

組織学的には萎縮性胃炎といい、胃粘膜が萎縮した状態となっています。

ただしその進行度は個人差が大きく、萎縮した範囲によって分類が分かれています。

胃カメラをすると、萎縮している部分と萎縮していない部分は、色調や血管の見え方で異なっているため判別可能となります。

この段階で早期に発見して除菌治療することで、徐々に胃粘膜が元に戻ることを期待します。

 

胃がんになる?

しかし中には、自分のように「胃がん」になる人がいます。

自分は、先に「胃がん」が見つかり、後からピロリ菌感染が判明し、手術後に除菌治療をしました。

 

WHO世界保健機関もピロリ菌には明確な発がん作用があると認定しています。

またピロリ菌に感染している人と感染していない人では、胃がんの発症率が有意に異なります。

胃がん治療後の再発も減少させる効果があるとされています。

一般のみなさまへ | 日本消化器病学会

 

ピロリ菌に感染した人全員が、「胃がん」になるわけではありませんが、除菌をした方が「胃がん」になる可能性は明らかに低下させることが出来ます。

 

まずは自分にピロリ菌がいるかどうか、慢性胃炎~萎縮性胃炎になっているかどうか、胃がんがないかどうか、調べてみることが大事です。

 

胃がん以外の病気は?

胃がん」以外にピロリ菌と関連する病気として、胃潰瘍・十二指腸潰瘍があります。

かつては潰瘍で苦しむ人が多く、再発を繰り返し、出血して吐血するため手術をする人も多数いました。

ストレスが原因と言われていた時期もありましたが、一番の原因はピロリ菌と言われています。

潰瘍の8~9割はピロリ菌が関連し、除菌治療をすると再発が非常に少なくなります。

 

また他にも胃MALTリンパ腫や特発性血小板減少性紫斑病(ITP)や機能性胃腸症や一部の胃ポリープはピロリ菌と関連があります。

実際、自分で検査した患者さんの中にも、MALTリンパ腫やITPの方がいて、除菌治療により軽快しています。

普段お腹がスッキリしない、いつもシクシクする、胃が重たい、といわゆる「胃が弱い」と思っている人も、除菌治療で軽快する機能性胃腸症の可能性があります。

胃ポリープの中でも、過形成性ポリープは除菌治療で縮小・消失することがあります。

 

実はいろいろな病気と関連しているピロリ菌ですが、除菌治療は簡単に行うことが出来ます。

 

また次回以降に治療とその後に気をつけること、治療の副作用についてお話しします。

胃がんとピロリ菌

こんにちは。

 

久しぶりの投稿になります。

 

ピロリ菌

今日もクリニックで胃カメラや大腸カメラをしました。

 

自分も胃がんの手術の時に判明しましたが、胃カメラをするとピロリ菌に感染しているかどうか、分かります。

 

だいぶ世間に浸透しており、「ピロリ菌」と説明すると、名前は聞いたことがあるという人がほとんどとなっています。

しかし、実際にどのような菌で、どうやって検査して、どのような治療が必要かどうかは知らない人も多いです。

 

胃がんと非常に強い関連がありますので、少しずつ解説していこうと思います。

ネットにもたくさん情報がありますので、参考にして欲しいです。

 

 

www.pylori-story.jp

 

 

まず胃の中にカメラが入っていくと、胃の表面が見えてきます。

胃のひだや粘膜の状態、胃液・粘液の付着の程度、RACと呼ばれる集合細静脈の状態、黄色腫の有無、発赤・びらんの有無等々、チェックすべきポイントは多数ありますが、ピロリ菌に感染したことがあるかどうかは、一度カメラで見てみると分かります。

 

 

感染している?

一般的には小児期までにピロリ菌が感染するかどうかが決まります。

まだ免疫力が完成していない小児期に、井戸水や両親から感染します。

逆にこの時期に感染していない人は、大人になって感染することは稀です。

20年前、40年前と比べると、現在の上下水道や衛生状況は非常に良くなっており、感染率は減少傾向にあります。

しかし現在50歳以上の方は、高齢の方ほど感染している可能性高いです。

 

 

どうやって検査する?

実際にピロリ菌の除菌治療を行うには、ピロリ菌が感染していることを確認することと胃カメラで潰瘍や癌が出来ていないことを確認する必要があります。

 

ピロリ菌の感染は、

尿素呼気試験:息を吐いて検査する。

血液検査:ピロリ菌に対する抗体を調べる。

便検査:ピロリ菌の抗原を調べる。

病理検査:胃カメラで組織を採取して顕微鏡で確認する。

ウレアーゼ試験:胃カメラで採取した組織が反応するか調べる。

いずれかの検査を実施して確認します。

 

それぞれの検査でメリット・デメリットがありますので、患者さんの状態に合わせて選択します。

尿素呼気試験:確実性が高いが、絶食の必要あり、胃薬内服中は評価出来ない。

血液検査:絶食不要で胃薬内服中も可能だが、針を刺す必要あり、偽陰性もあり。

便検査:痛みなく採取可能だが、受診当日は困難なことが多い。

病理検査:胃カメラと同時に出来るが、採取する部位により評価出来ず、血液サラサラの薬を内服している人は採取できない。

ウレアーゼ試験:検査当日に判明するが、胃カメラをする必要あり、採取する部位により評価出来ないことがある。

 

担当医とよく相談して、検査をすすめて欲しいと思います。

 

 

ピロリ菌と病気との関連性や除菌治療について、また除菌治療後も気をつけることがあります。

とても1回で書き切れませんので、次回以降に続きます。

 

訪問診療

こんにちは。

 

昨日は地域医師会の新年会がありました。

診療科に限らず開業医の集まりですが、今回は夫婦同伴でしたので、妻もドキドキしながら参加しました。

 

先輩開業医といろいろ話をする中で、新規開業から徐々に患者さんが増えて、在宅での訪問診療を開始した話を聞くことが出来ました。

 

 

以前離島の診療所で勤務していたときも、町立病院で勤務していたときも、訪問診療をして在宅で看取りをしてきました。

患者さんの病状だけではなく、今までの人生の歴史や家族との関係性や家庭のようすを見ることが出来たり、季節を感じながら過ごすことが出来ていました。

病院を出て患者さんの家に行くときは、いつも「今日はどうかな?」と病院内で勤務しているより少しテンションが上がりながら向かっていました。

 

先月クリニックでも、外来通院していた方が通院困難となり在宅での訪問診療となりました。

本人は病院よりも自宅を希望し、家族も同様に自宅を希望していました。

最終的に自宅で看取ることとなりましたが、本人・家族が納得出来る最期となれればと、出来るだけのことをしました。

 

 

その往診の車中で、妻とお互いの最期についてどこでどうしたいか話をしました。

まだともに30代で小さな子どもが2人いる今、適切な話題かどうかは疑問でしたが、それぞれ考えていることが分かって、再確認できました。

 

妻は、最期は病院で、と希望しました。

理由は、自分で出来なくなることが増えていく中で、家族にその負担を強いることがイヤだし、してもらいたくない、見せたくないとのことでした。

 

自分は、最期は在宅で、と希望しました。

妻は、出来ることをしたいけど、出来るかどうかは分からないとのことでした。

9年前胃がんの手術で入院中、お腹の手術の傷が痛くてほとんど動けなかった時、妻は手浴、足浴やマッサージをしてくれました。

医療スタッフにも出来ることですが、家族にしてもらうことで、非常に嬉しくありがたかったです。

そんなことをふと思い出しながら、在宅で、と希望しました。

 

 

外来に通院している人や入院している人だけではなく、今は健康で病気に縁がないと思っている人も、いつかは病気になることもあり、死ぬときも訪れます。

直前に慌てて考えて話しても、なかなか考えがまとまりません。

今の想いは、1年後、5年後、10年後には変わるかもしれませんが、その想いを家族と共有しておくことが大事だなぁと思います。

 

 

今後どこまで出来るか分かりませんが、目の前にその必要性があれば、クリニックでも自宅でも施設でも、どこへでも馳せ参じて診療をしていきたいです。

 

がん10年生存率

こんにちは。

 

今日のニュースで、がん10年生存率のデータが更新された、とありました。

www.zengankyo.ncc.go.jp

 

振り返ってデータを見て思うことはいろいろあり、データはあくまでただの数字ですが、告知されてから手術前の時期は自分にどうあてはまるのかと考えていました。

 

たとえば「胃がん」の全症例の10年生存率は、67.3%とあります。

ただし当然進行度、ステージにより異なります。

 

ステージⅠ 93.9%

ステージⅡ 55.8%

ステージⅢ 38.1%

ステージⅣ 7.0%

 

ステージⅠの早期癌であれば9割以上の方が生存していますが、ステージⅣの進行癌であれば9割以上の方は亡くなっています。

しかしどちらも100%ではなく、0%でもありません。

ステージⅠでも亡くなっている方はいるし、ステージⅣでも生存している方はいます。

 

上記のHPにも書いてあるように、がんは不治の病から、つきあう病へ、治る病へ変化しています。

あくまで今まで治療された人のデータであり、自分のこれからの未来の数字ではなく、もちろん余命でもありません。

現在10年生存率が出ている人が10年前に受けた治療と、今まさにこれから受けようとしている治療は完全に同じかどうかは分かりません。

 

医師としては、癌になったひとが自分はどうなるのかと気にして見るデータではなく、癌になっていない人がどういう癌はタチが悪いのか、治りにくいのか、治療後も長年再発の危険性があるのか、といったことを知るためのツールにすぎない、と思います。

 

自分自身も、いろいろなことを考えながら、数字を気にすることなく、治療に臨み、術後を過ごしてきました。

もうすぐ今年の9月には、自分も術後10年を迎えます。

 

いつもと変わらず、家族とともに、仕事をしながら、その日が来ることを楽しみにしています。

そして次の10年に向けて、日々楽しんで頑張りたいです。